友愛 |
2010年4月1日。地球に宇宙人が来た?最近UFOの目撃情報が多発している。
中には実際宇宙人に接触したという証言もあり、 その人によれば、地球人に化け潜伏している為、容姿だけでは分からないが、 地球人の事をあまり理解していないため、虚言や不審行動が多く見られるらしい。 目的は侵略なのか、謎である。 防衛省も動き出し、宇宙人対策部隊を立ち上げ派遣するなど、宇宙人退治に躍起だ。 山田太郎は、そんな記事の載った新聞を読みながら、新入社員として会社に向かった。 「今日は新入社員が二人来てくれたぞ」 社長の言葉に続いて新入社員の自己紹介に移った。 「こんにちは、山田太郎です。20歳です。宜しくお願いします」 「こんにちは、田中太郎です。50歳です。宜しくお願いします」 社員がざわめく。田中太郎と名乗った男は、明らかに若者の風貌なのだ。 「なんちゃって、本当は20歳です」田中はおどけてそう言った。 昼休み、屋上でランチを楽しむOL二人はこんな会話をしていた。 「ねえ、新聞見た?新入社員、宇宙人だったりしてね」 「馬鹿、今日は何の日だと思ってるの?エイプリルフールよ?」 エイプリルフール、それは、危害が及ばない程度の嘘なら許される、4月1日の事だ。 仕事場では、仕事を終え、休みに入った山田が、田中に話し掛けられている。 「よう。お前、俺と同じ名前だな」 「そうだね、良くある名前だしね。君も長男だよね?」 「俺?いや、次男」 「え?そうなの?変わってるね」 「まあ、本当は長男なんだけどね」 「何だよ、嘘かよ」 「悪い悪い、それよりさ、新聞見た?」 「ああ、宇宙人のやつ?見たよ」 「面白い本有るけど見る?」 「どんな本?」 田中は『宇宙人を呼ぶ方法』と書かれた粗末な作りの本を出した。 「へー、面白そうだね」山田は目を光らせそう言った。 「貸してあげるよ」田中も目を光らせそう言った。 山田は本に軽く目を通し、それを持ち屋上へ向かった。 山田は、屋上で空に向かいコマネチを何回もやっている。 本に宇宙人を呼ぶ方法の一つとして書かれていたためだ。 「あいつ、本当に宇宙人なんじゃない?」 ランチを楽しむOL達は、気違いから身を遠ざけるように、仕事場に戻った。 山田が何の音沙汰もない空を見上げ、ため息を吐いている時、そこに田中がやってきた。 「やってるねー」田中は哀れな目でそう言った。 「駄目だ、宇宙人来ないや」 「宇宙人ってのは、純粋な人間の前にしか現れないんだ、 もしかしたら熱意が足りないのかも」 「えー、そうかな?」 「疑ってない?」 「全然」 「・・・その本欲しい?」 「うん、欲しい。いくら?」 「100000だ。」 「まじで?有難う、安いね。明日渡すよ。」 「純粋だな。その熱意、宇宙人に届くよ。 そうだ、仕事終わったら屋上へ来てくれる?話があるから」 そう言い、田中は仕事場へ戻った。 「コマネチ、コマネチ」山田はコマネチを続け昼休みを終えた。 仕事が終わり、約束通り山田は屋上へと向かった。 そこには何者かが立っている。 「やあ、山田君、来てくれたか、私は宇宙人だったのだ、君を試していたのだ。 君のような純粋な人間を探していた、地球人を殺すのは見送ろう。なんちゃって」 怒涛の銃口が火を噴き、太郎は殺された。 「そうか・・・五人も・・・」 「奴等が言うんだ、エイプリルフールと。一体何者だ?」 太郎は日々地球の平和を守っている。 |